制限された拡散現象のMSD解析

 

私が若い頃によく読んで勉強した論文の一つに,

Confined Lateral Diffusion of Membrane Receptors as Studied by Single Particle Tracking (Nanovid Microscopy). Effects of Calcium-induced Differentiation in Cultured Epithelial Cells
Biophysical Journal Volume 65 November 1993 2021-2040

楠見先生,佐甲先生らの論文で1993年ですから,もう30年以上前の論文ですね.

その中に,MSD (Mean Square Displacement),による解析手法があり,時間と変位の分散値との関係が,

 直線 : シンプルな拡散(一次元の場合,傾きが,2D,となる)
 下凸 : ドリフトのある拡散
 上凸 : 制限のある拡散

となります.

直線:

\( \Large \displaystyle <x^2> = 2Dt \)

下凸:

\( \Large \displaystyle <x^2> = 2Dt + v^2(t) \)

となることは直感的にわかるのですが,問題は,上凸の制限のある拡散,です.

論文では,

\( \Large \displaystyle <x^2 (t)> = \frac{L_x^2}{6} - \frac{16L_x^2}{\pi^4} \sum_{n=1 (odd)}^{\infty} \frac{1}{n^4} exp \left\{ \frac{1}{2} \left( \frac{n \pi \delta_x}{L_x}\right)^2 t \right\} \)

tが大きくなってきたときには,

\( \Large \displaystyle <x^2(\infty)> = \frac{L_x^2}{6} \)

二次元の場合には,

\( \Large \displaystyle <x^2(\infty)> + <y^2(\infty)> = \frac{L^2}{3} \)

となることが示されています.

これらの式の導出には,論文最後のAppendixに示されていますが,ここでは,グリーン関数,という関数が使われおり,名前はとても親しみが湧くのですが,何をやっているか全然理解できない関数だったので,30年以上この結果を導き出せない状態でした.

どうも,グリーン関数は,δ関数を使って導き出す手法なのですが.....

結果的に...グリーン関数をHPで説明できるほどの実力はまだついていませんが,最終的なサチる値,\( \Large \displaystyle \frac{L^2}{3} \),の導き出し方がわかりましたので,記します.

実は.....ChatGPT,に教えてもらいました.... 

 

・MSD

平均二乗変位の時間依存性,MSD (Mean Square Displacement),がよく拡散の評価に使われ,二次元の場合には,

\( \Large \displaystyle MSD(t) = \left< (x(t) -x_0)^2 \right> + \left< (y(t) -y_0)^2 \right> \)

となります.初期位置からの変位の二乗,となるわけです.制限されていない場合には,

\( \Large \displaystyle MSD(t) = 4Dt \)

となります.

 

次ページから,制限のある拡散,を検討していきます.

 

 

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